大切なチケット


父と二人でシカゴに行く事が決まり、次にやることはショーのチケットを取得することだった。
日本で行われるライヴに関してチケットを取る方法は心得ている。
しかし、海外で行われるライヴのチケットを取るのは今回が初めてだ。

まずパソコンで、菊田さんが添付してくださったスター・プラザ・シアターの
チケット・マスター(日本でいうチケットぴあ)のページを開き、
座りたい席を決めて料金を確認する。
そしていろいろな事柄を入力していく。
この際、いくつかのセキュリティーを通過しなければならない。
英語を瞬時に理解できない私は
「1分以内に書き込みなさい」という制限時間に間に合わず、
詳細を読んでいるうちにいつもタイム・アウト。
やっと最後の方のページにたどりつく事ができたが、
「パスワード入力」で必ず挫折してしまう。

どこかで大切な言葉を読み落としているにちがいないと思って、
英語が堪能な友人Kさんに、チケットの取り方を尋ねてみた。
現在、Kさんは海外にいて重要なポストを任されている。

Kさんは、
「B.B.キング、いいよね〜。
今は地元の歌手の歌ばかり聴いているけど・・・
仕事でシカゴ方面に行った時、タクシーに乗ったら南部訛りの運転手で、
これぞR&Bの世界だ〜って思ったよ!」
などと言いながら快く引き受けてくれた。
「Kさん、忙しいのにありがとう。これでチケットが取れる!」
と密かに期待をして返事を待つ。
しかし、
「ダメだ・・・最後ではじかれてしまう。お役に立てずゴメン。」
という知らせがくる。

私は「仕事で忙しいのに、本当にありがとう。」
とメールを出して、もう一度自分でトライしてみた。
最初にチケットを取ろうとサイトを開けた日から数日経っていて、
もう後ろの方の席しか空いていない。
どういうわけだか、何回やってもチケットは取れなかった。

ライヴの当日、会場でチケットをもらうという欄にチェックを入れて
チケットの代金をクレジット・カードで支払うのだが、
「もし何かのトラブルでチケットが用意されていなかったら?」
と考えると、焦りとともに大きな不安も私にのしかかってきた。

そのうち、現地にいらっしゃる菊田さんに取ってもらった方が確実だ、
という考えに至り、
「最悪チケットがとれなかったら、代わりに取ってあげるよ」
という彼のありがたいお言葉に甘えさせていただくことにした。
このような不躾なお願いをすることは本当に申し訳ない。
・・・心が痛んだ。

でも、どうしてもBBに会いたかった。

2月3日節分の日、菊田さんから嬉しいメールが届く。
「チケット、取れました!
週末、インディアナ州に行く用事があり、
途中チケット・マスターのオフィスに寄って買いました。」
席の番号も教えてくださり、私が買おうとしていた席だったこともわかる。
まさかオフィスにまで行ってチケットを取ってくださるとは思わなかったので、
そのご親切に心から感謝をした。
チケットは書留ですぐ送ってくださるという事だったので、
首を長くしてチケットが届くのを待った。
普通郵便の場合、シカゴからだと6日ぐらいで届く。
しかし、書留の場合、最低でも2週間はかかるらしい。

2月21日、はるばるシカゴからチケットが届いた時は
本当に嬉しかった。
中を開けたら「B.B.KING」の文字。
「ありがとう!」の言葉と共に、心はすでにシカゴに飛んでいた。

<04・4・24>